IPAT生涯会員
更新日:2020年5月12日
2019年の11月、米国に本拠を置く国際的な絵付け団体、IPAT(アイパットInternational Porcelain Artist & Teacher Inc.)から、私がLifetime member(生涯会員)に処遇された旨の手紙が届きました。生涯会員とは、生きている限り、毎年、意思を示せば無償で会員としての権利を受けることができるという大変名誉な待遇であります。その知らせは何の前触れも無く唐突に届き、本当に驚きました。この生涯会員の名誉を受けたのは存命中の歴代の米国人プレジデント達と日本にIPATを紹介し、長年多岐にわたり貢献し、数年前に絵付けの世界から引退された奥村由美子氏そして私がその末席に加わらせていただいたのです。
数年前まで10年間近くIPATの役員(資格審査委員と日本代表)を務めたことが、走馬灯のように思い出されてきました。その仕事のほとんどは誰にも評価されることの無い地味な無償の仕事でした。ここ数年は、家庭の事情もありIPATと関わる時間は減少していたので今更ながらの名誉に大変驚くと同時に、何とも言えない静かな喜びと感謝の気持ちが心に満ちてきました。
最初にIPATの役員を引き受けたのは、2005年頃の事であったと記憶しております。当時、インターナショナルな絵付けの会での名誉ある役職は私にとって憧れでありました。絵付け界ではさほどの実績が無い私でしたが、知り合いの先生からたまたま「IPATスクリーニングコミッティー」というアジア地区の資格審査役をやらないかとの声がかかり、迷うことなくお引き受けすることに決めました。若輩者の私が名誉な役職を二つ返事で受けたことで、一部の方から快く思われていないという話が耳に入ることもありましたが、一生懸命誠実なお仕事をすることで、理解してもらうしかない、と心を決めて頑張ることにしました。しかし、実際の仕事は想像以上に多忙で細かく、経済的な持ち出しになることもあり、大変な仕事でありました。かといって、引き受けたからには簡単に投げ出すことはできません。追い詰められて、信頼できるスピリチュアルな人に相談したこともありました。つまり「アーティストとして作品制作をする時間を奪うボランティア仕事にかかわるのはもう全部やめて、私は作品制作に専念するべきなのではないか。」という相談です。私は誰かに「作品制作に専念しボランティア仕事はやめた方が良い。」と言ってもらい、背中を押してさえもらえれば、お役を誰かに代わってもらう自分への口実になり、楽になれるかもしれないと期待したのです。しかし、スピリチュアルな人はこう言いました。「あ、今メッセージが来た。あなたはボランティア仕事をつづけた方が良い。それは自分のためでもあるから。」それを聞いたときには、全然具体性を伴わないアドバイスなのに、なぜか腑に落ちて腹が決まりました。若輩者が望んで引き受けた仕事なのだから、つらいことがあっても当然のことでした。その後、長年にわたる役を頑張りぬいたことで、IPATや周囲の信頼を得ることができ、「IPAT日本代表」も務め人脈を得て、その後のチャンスにも繋がりました。それだけで十分報われたと思っていたので、こうして何年もたってから改めて過去の実績を評価して頂いたのは望外の幸せと感じたのでした。
私が、作品制作や教えたりする仕事の合間を縫って絵付け関係のボランティアをする理由は、『多くの人から受けた恩をその人達に返せなければ世間に返す。』。これが原点にある思いです。